November 16, 2009

「ここまではまだ準備段階」

(午前3時 Dstにて)

制作A「お金が欲しい!お金があったら何でも買える!!家だって買えるよ!!!」
制作B「家買ったって、どうせ帰れないじゃないですか…」

そんなモノ哀しいアメリカンジョークが繰り広げられている昨今、皆様如何お過ごしでしょうか?

ども、ら~です。

さて前回につづき、今回も「アニメ制作」の過程を 追ってみましょう。
今回紹介するのは、作品を作るうえでも、かなりクリエイター色が強い三つの役職。
ではまずシナリオから。

②シナリオ
前回紹介した「企画」で作品の始動が決まったら、ライターさんにお願いし、
シナリオを起こします。
「鋼FA」ではシリーズ構成の大野木さんを含め、基本5人でシナリオを回しております。
私以外は全員シリーズ構成レベルの人達ばっかり。……もうどうしろっての!?

この作業では、その話数のお話の流れ、キャラの芝居や台詞、段取りなんかを細かく決めていきます。

「鋼FA」は原作ものですが、これをまんまアニメにはできません。
「原作ありきだからそのまま起こせばいいじゃねーか」とは素人の考え。
漫画では、よくわからなければ再度読み返すこともできましょうが、アニメではそうはいかない。

難しい説明台詞などは聞いた瞬間にわかる台詞に直さなくてはなりませんし、
漫画時はよくても、実際人が声に出して読むと、
思った以上に長ったらしい台詞になってしまったり、
動きをつけると思わぬ長いシーンになってしまって、
尺に入らない&物語にメリハリがなくなるなんて事態が起こることだってあります。

どこを省略し、どこをじっくりやるか。

ただでさえ「鋼FA」は内容がてんこ盛りな作品です。
加えて設定的なすり合わせや、各シーンの吟味、台詞の租借、
これやると現場に負担がかからないか、あれ、この役者さん今回一言しか台詞がないなどなど……。
いろいろ、いろいろ、本当にいろいろ考えなくてはいけません。

そしてそこまで悩みに悩んで提出したシナリオ。
「本読み」では、そんなことお構い無しに、各スタッフやプロデューサーの方々に、
情け容赦なく吟味されます。
その厳しさは、時として「え、今オレの人生、全否定された?」なーんて、
思わず被害妄想に陥ることも…(汗)。

シナリオは楽じゃありません。
一言一言、文章の助詞一つに至るまで、明確に審査されます。
それゆえライターさんは、数多くの言葉、文章を知っていなければなりません。
と、同時に効果的な見せ方、台詞などを創造するために、いろんな事を知ってる必要があります。
(ネタの仕入れですな)

そのためシナリオライターの方々の多くは、映画や舞台にとても詳しい方が多かったりします。
ライター志望のかた、今からでも一杯映画や本なんかを見ていろんな知識を蓄えておくことを
お勧めします。……私は今、それで大変苦労しております。(トホホ)

③設定

さて本読みにてシナリオが決定になれば、次はコンテ……という訳にはいきません。

“コンテを切る”には、も一つ材料が足りないのです。
それは…………、設定!

  settei.jpg
                    (設定起こし中の菅野さん)


設定……その作品の絵的な世界観を決めていくこの作業。

一口に「設定」といっても、作品に出てくるキャラの姿を決める「キャラ設定」、
シーンや場所の雰囲気・姿を決める「美術設定」、その他様々な小物の形を決める「小物設定」など
いろいろ種類がございます。

キャラクターが衣装を変えるたび、場所を移動するたび、これらをおこさなくてはなりません。

設定がないとコンテも切れませんし、演出・作画もできません。
みんな、好き勝手に描いてもらっては困るワケです。
アメストリスでいきなり十二単や寝殿造が出てきたらマズイでしょ?(別の意味で面白そうですが)

「鋼FA」は原作ありきの作品ですが、それでもいろいろいろいろ考えなくてはいけません。

例えばキャラ設定。
自分の持ち味も出しつつも、現場的に線の多さはこれ位でいいか、
影やハイライトはこんな感じかなどなど…。

キャラは動くものです。
あまり線が多すぎると、原画は上がりにくいし、
動画は崩れたり、線抜けを頻繁に起こしたりもします。
また影やハイライトに凝りすぎると仕上げ時に大悲鳴が起きてしまいます。
(なのにウチの会社のときたら、何故かみんな複雑な物が多い。
滅茶苦茶動かすくせに………いや仕方ないのはわかってんだけどサ…………ブツブツブツブツ)

現実的な問題と折り合いをつけつつ、如何に魅力溢れるキャラクターを生み出せるか。
設定を作る人=デザイナーさんの腕の見せ所ですね。

またアニメの処理に合わないようでしたら、原作側と相談しつつ、原作の設定を変えることもあります。

例えば「鋼FA」では、ある場所の美術設定作成時、
「こんな高い所に行くのに階段では大変だ」と、
原作では階段の所をアニメではエレベーターにしてみたりしました。

ところがアナタまあ、まさかあのキャラが、後々原作で階段をズシズシ上って、
戦車一台破壊する事になろうとは……。
「おいエレベーター、どうすんだよ?」……設定制作はこの時フギャっと打ちのめされてしまったそうです。

デザイナーさんに対する要望は千差万別です。
リアルなものからファンタスティックなものまで…シナリオライター同様、設定マンさんも
いろいろ知識を知っておかなければなりません。
だからデザイナーの皆さんも映画は勿論、写真集や絵画集などにもとても詳しいです。

③絵コンテ

さてシナリオが上がり、設定もある程度揃えば、次はいよいよ絵コンテです。

監督がコンテを切る事もありますが、流石にテレビシリーズではスケジュール的にいろいろ厳しいので、
シナリオ時と同様、「鋼FA」でもコンテが切れる人=複数のコンテマンさんにお願いしております。

その話数のコンテを切る人と打ち合わせを行い、そこでどういう話にしたいのか、
いろんな設定や注意事項と共に申し送りをします。
そしてそれらを踏まえコンテマンさんは、シナリオを基に、様々な処理を駆使しつつ、
画面構成や尺、絵的な演出方法を決めていきます。

コンテもコンテマンさんによっていろいろ癖がございます。
特殊なカメラアングルを多様する人、独特な雰囲気を醸し出すコンテを書いてくる人、
果ては「おまえ、頭ん中どうなってんだ?!」と思わずツッコミたくなるような、
ヘンテコギャグコンテを描いてくる人など…。
同じシナリオでも、コンテマンさんにより全く違った作品になったりします。
コンテマンさんも、基本ネタ出し勝負的な所があるため、いろいろ映画やドラマに詳しいです。

とはいえ、じゃあ知識があるといいコンテが描けるのかというと、やはりそう簡単なものでもない。

その昔、某監督に「いいコンテを切るためにはどうしたらいいですか?」との質問をした事がありました。
答えは……………、

                     「素っ裸になれ!!!」
 

( ゚д゚)ポカーン…………。

要は自分という内面を、カッコつけず、これでもか!と、それこそフルチン覚悟で晒す
情熱が重要なのだそう。
よくわからないけど、熱い、熱すぎるぜ I 監督……。

余談が過ぎました。

さて、コンテマンさんよりコンテが上がれば、そのまま監督の手元へ。
ちゃんと要望どおりに上がっているか、作風から外れていないか、設定間違いはないかなど、
ここでもいろいろとチェックしていきます。(今回は”いろいろ”が多いなァ)

「○日に演打ち組むんでそれまでに!」……この辺りから、制作の“スケジュール”に対する
締め付けも厳しくなっていきます。

そして監督チェックが終われば、いよいよアニメの現場始動。

「え?まだ現場って動いてなかったの?」

………ハイ。ここまでは、その作品を作るための「前準備」に過ぎません。
先はまだまだこれから。アニメ完成への道は遠いのです

       konte.jpg
             (丁度コンテチェック中の入江監督の机。盗撮成功です)
 

さあ、次回から現場作業のスタートです!

                                                    (ら~)

Posted by Cスタ : November 16, 2009 08:22 AM