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2010.0212

「アニメ制作の道~別にこの企画忘れてるワケじゃありません~」

さて、先日絵コンテ完成まで話を進めました。

ではコンテ完成後どのようにアニメ制作は進むのか。
何はともあれ、まずは打ち合わせです。

④演出打ち・作監打ち

バラバラにする時もありますが、
基本ウチではこの二つの打ち合わせを一度に行ないます。

出席者は、監督とその話数担当の演出さん&作監さん、
そして担当制作と設定、あと「鋼FA」では撮影監督さんも参加します。

まあ、名前が表しているとおり、
ここでは監督から担当演出さんと作監さんへその話数の演出方向や使う設定類を伝え、
各カットの処理方法などを具体的に決めていきます。

余談ながら、コンテ完成後から打ち合わせへ突入までの時間はかなり短く、
その期間は大体半日~1日未満。
だからこの時期の設定さんはとても大変です。
約半日で、上がってきたコンテの体裁をキチンと整え、
その話数で使う設定や参考すべてを、そこら中より探してこなければなりませんから……。
よく打ち合わせ前に、机で死んでいらっしゃるのをお見かけ致します……。(おいたわしや)

「このカットのイメージはこんな感じで…」
「この撮影処理行なうには、コレとアレとソレが必要で……」

こんな感じで、打ち合わせでは1カット1カット吟味していきます。

コンテを切ってる段階では「コレ、いけんじゃね?」と思った処理も、
この打ち合わせで検討した結果、どえらい労力が要ることが判明して、
慌てて代案を延々と探ることだってあります。

だからこの打ち合わせ、とても時間がかかります。
その平均時間は、約6時間……。

6時間ずっと座りっぱなし。
結構ツライです。
やっちゃいけませんが、ついウトウトしてしまうことだってあります。
人によっては、さらに長くなることも…。

しかしここで言われた事は、
今後ずっと、最後までついて回ることなので、
この打ち合わせに関しては、いつも以上に気合い入れて臨まなくてはなりません。
つい疲労でウトウトしかけても、
まぶたに力を入れ、持ってるボールペンで太ももを密かに刺しつつ、
なんなら机の上の設定をよく見るフリをして会議室内を歩いてみたりし、
なんとか難局を乗り切らなければなりません。(でも座るとやっぱりウトウトする)

そしてこの打ち合わせが終了すると、怒涛の作打ちラッシュが始まります。
いよいよ具体的な絵作りの開始!
 

……………でも、その話をする前に皆様に一つの職種をご紹介しなければなりません。

その名は…………………「制作進行」!
 

会社によっていろいろ役割・権限は違いますが、
ウチでは基本、その話数の制作担当者。

自分が担当した話数に関しては、プロデューサー・デスク以上に詳しく知っていなければなりません。

「制作」の中でも一番の下っ端の役職ですが、ただのパシリじゃないのです。
この人達が倒れると、その話数は90%の確率で崩壊してしまう、
歴とした、責任重大な役職であります。(恐ろしや)

「おまえ○話の担当な!!!」

デスクにこう言われた瞬間から、制作進行の孤独でツライ闘いは始まります。

ウチでは、その話数担当の演出さん・作画監督さんは基本デスクが集めますが、
各話数のアニメーターさんについては制作進行が集めることになっています。
(これも会社によって違います。デスクが作画さんを集める所もあったり、
逆に進行が演出・作監、果てはコンテマンまで集める所もあったり)

というわけで、自分の持ち話数が決まった瞬間、
早速制作進行たちは、知り合いのアニメーターさんたちにお電話をかけます。

「スケジュールはこんな感じなんですけど、どうですかァ?」
「アナタが入ってくれないと、僕困ります!」

進行により作画さんへのアプローチ・口説き文句は千差万別。
ちなみにウチの社長の口説き文句は、「なあなあ、一カットでいいからやって~。
悪いようにはせえへんから~~~ァ」だったそう。

昔はそれこそ2~3人の作画さんで1本回していたそうですが、
現在、一人の作画さんにお願いできるカット数は平均5~20カットくらい。
ウチで作るアニメ一本分の総カット数が、大体300カット程なので、
平均15~20人以上の作画さんにお願いしなければなりません。

ここから先は私の愚痴になりますが、
一時期「アニメバブル」と言われ、週100本程アニメが生産されていた頃は、
本当に作画さんが捕まらなかった!

原作もののアニメであれば、まだ原作ファンのアニメーターさんがいるからよいものの、
オリジナル作品だと、当然誰もその作品を知らないため、
作品がOAされ、その作品の魅力を分かってもらえるまでは、
本当に地獄そのものでございました。

「作画さんが捕まらない……ひょっとしたらこのままV編まで埋まんなんくて、
会社クビになっちゃうかも……いやそれよりも前に全部カラーに出来なかったら
放送事故じゃねーか…………アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!(゚∀゚)オワタ~」

極度の被害妄想に陥りながら何度も何度も自分の電話帳をめくる日々。

しかしそんな事をしても、お知り合いの作画さんが増えるワケでもない。
そうこうするうちに胃の痛みは、はやマックス状態に。(早ッ!)
かつて制作進行であった私は、基本ネガティブ思考なため、
この瞬間が作品を作るうえで一番苦痛でした。
(この時期はそんなに忙しくないから余計にね)

まあ、最終的にはデスクもガッチリ巻き込んで、
毎回なんとか致しますが……。(あの時はごめん、デスク)。

さて、そんなこんなでなんとか規定の人数に作画さんが達すると、
次に進行が行なうのが、 『カットの割り振り』 。

カットの割り振りについてはいろいろ言いたい事もあるのでまた次回に。
あまり長すぎると、またA監督よりお叱りを受けてしまいますので。
というか、もう充分長いですね…………(またやってしまった)。
ではではまたまた。
                                                    (ら~)