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2009.1028

「オレの過去を明かす時がきたようだ」

昨今ボンズのヨタ日記では、思い出したかのようにクリエイター特集が組まれていますが、
そもそも世の中的には、クリエイターがどうとか言う前に、
「アニメって、どんなふうに作っているのか?」すら知らない人が殆どじゃないかと思ったのが、
この企画の発端。
題して……、
 

              「アニメ制作の道!~どげんかせんといかん~」

 

皆さん、「原図」って言葉、知ってます?
じゃあ「マーキング」は??(犬のアレじゃないよ)

かくいう私もボンズ入社当時は全く知りませんでした。
知らないままアニメを作り始めたのです。(おそろしや)
そんな人たちのための、入門書的な意味合いも込めて、
「鋼FA」を題材にアニメ制作の流れを追ってみようかと。
まあ、ボンズではまだ誰もこういう企画やってませんしね……。(他社は知らん)

とりあえず、あまり難しい、マニアックな方向にだけは行かないように気をつけます。
真面目な話だけじゃなく、業界のウラ話なんかも混ぜて面白おかしくやっていければいいかなと。
というか、むしろ私的には「無駄話8割」方針でやっていきたい!!!

ふっふっふ…………、制作人生約6年。
現場のウラのウラまで知り尽くしたこの私・ら~の、別の意味でのマニアック体験談。
現場の顔色が青白くなる事間違いなし!「大人の事情」なんて関係ないぜ!!目指せ業界視聴率ナンバー1!!!
ちなみに今回ここで紹介するのは、あくまでボンズでの作り方ですのであしからず。
(細かい所になると各会社ごとに違ってきます)

 
 
①すべての始まり
「おい、こういうアニメやろーぜ!」―どこかの誰かがこう言い出すことで全てのアニメは始まります。

これが「企画」です。

とりあえず企画書なんかの写真をup……とも思ったのですが、
……「門外不出」と上司に却下されてしまいました…。(残念)

ここの所、早速詳しく書きたいのですが…………………、実は私もよく知りません。(オイ)

というのも、この段階の頃はとにかく「秘密」。
作品の全てが何がなんでも「秘密」厳守!

どんな作品をやるかはもちろん、作品を作ろうとしていることさえ、
余所はおろか、同じ社員にさえ言っちゃあいけない、知られちゃあいけない。
おかげで私、ボンズ社員であるにも関わらず、現場を離れた今では、
HP発表ではじめて「お、ウチこんな作品やるんだ」と知る事も多々あります。(トホホ)

そしてこの段階で動くのは、基本私なんか歯牙にもかけられないほどのエライ人達ばっかり。
(現場の人間はあんまり関係ありません。だからよく知らないの……涙)
そんな人たちが、作品の方向性などを模索しつつ、
作品への出資者や制作するアニメスタジオ、メインスタッフなどをここで決めていきます。

原作つきでもオリジナルでも、どういう感じの作品にするのか、作品の土台中の土台が
ここで形作られるワケですが、なにせ作品の姿がまったく決まってないので、
「あんな事してはどうか」「オレはこんな事をしたい」などなど、
みなさんこの頃はいろいろ夢見がちになります。
プロデューサーさんの多くは、この段階が一番楽しいらしいですね。

とはいえ、一見夢一杯で楽しそうな「企画」、
裏を返せばそれは、肝心な所が何も決まっていないシャボン玉のようなもの。
アニメ制作において最も不安定な時期でもあります。
立ち上げたはいいが、様々な「大人の事情」により、恐怖の「企画倒れ」となることも稀ではありません。
(だからこの時期は他人に作品の事言っちゃいけない)

ここで様々な障害を乗り越えつつ、なんとか放映できる算段にまで漕ぎ着けるのが企画担当者、
そして制作のエキスパートであるプロデューサーさんたちの腕の見せ所。
細心の注意でもって、なんとか作品を世に発表できるよう、道筋をつけなければなりません。
 
その昔、私が制作として入社したての頃、ウチの社長に、

「制作は一見作品に対して何も生み出さないように見えるけど、
例えば制作の到達点であるプロデューサーなんかは、
何もない所から作品を作るためのお金や人を集めてくる。
間接的ではあるけれど、制作も立派なクリエイターなんだよ」

……というお言葉を頂きました。(うろ覚えですが、確かこんな感じ)

「クリエイター」というと、一見特殊な技能を持った人達のみに光が当たりがちですが、
でもどんなにすばらしい作画の腕を持っていようと、どんなに素敵な演技力を持っていようと、
それを発表できる場がなければ「宝の持ち腐れ」、何の意味も持ち得ません。
そしてその環境をゼロから作り出すのが、他でもない、実は何の特殊技能を持たない「制作」なのです。
(まあ、本当は”しゃべくり”という特殊技能があるのですが)
仕事できないながらも、私が制作としてのプライドを持とうとしたのは、すべてこの言葉がきっかけでした。

次回、シリーズ②「書き起こせ!愛と哀しみのシナリオ」へつづく!(いやホントもうマジで)

                                                      (ら~)